第30回 日本中毒学会総会・学術集会 参加報告




「Acetaminophen中毒の毒性評価に有用な分析方法の提案」  友田(M2)


要旨

 Acetaminophen(APAP)中毒では、摂取後4時間以降の血中濃度が肝毒性や解毒薬投与の判定に用いられることから、本邦においても血中濃度の測定が普及してきた。特にTDM用汎用機器(TDXFLX®等)が設置されてない医療施設では、安価で簡便なHPLC-UV法が推奨される。また、同時摂取する他剤や配合成分による中枢神経毒性が多く見られることから、今回、中毒症状に関与するUV法による配合成分の同時測定を検討した。さらに、摂取後経過時間が長く低濃度の検体ではAPAP付近に妨害ピークが出現するため、APAPに特異的な電気化学検出 (ECD)による分析も併せて検討した。
 【方法】4成分同時測定法:前処理は固相抽出法。検出はフォトダイオードアレイによる2波長検出(280nm210nm)。移動相は15mMリン酸緩衝液(pH4.4)AcCN= 955から8020にグラジェント、流速0.25mL/min。内部標準物質としてo-acetamidophenolを用いた。ECD法:前処理は有機溶媒除蛋白法。印加電圧は+340mV。移動相は50mMリン酸緩衝液(pH4.8):メタノール= 937、流速1.0mL/min。絶対検量線法にて定量した。いずれもC18カラムを用いた。
 【結果・考察】2波長検出グラジェント法により、APAP製剤に多く配合されるcaffeineethenzamidebromovalerylurea(それぞれ検出下限2.05.05.0μg/mL)を感度良く、APAPと共に測定時間約25分で測定することができた。これらの成分はAPAP中毒の初発時に多く見られる中枢神経毒性に関与しており、意識障害発症症例や配合成分の関与が疑われる場合は本法を選択することが推奨される。一方、ECD法はUV法に比べ、感度と選択性が高く(APAP検出下限:1ng/mL)、妨害ピークを回避し低濃度における正確な測定に適している。UVでは妨害ピークによって正確に定量できない症例検体も、ECD法で定量することができた。APAP中毒患者35検体におけるUV法とECD法の測定結果の相関性も良好であった(r=0.94)。経時的にAPAP濃度を測定する場合や、摂取後経過時間が不明な場合、妨害ピークが出現した場合には、ECD法が推奨される。また、ECD法では、APAP代謝物やその代謝に関連するcysteineglutathioneの測定も可能であることから、今後、APAP中毒の詳細な毒性評価に利用してゆく予定である。


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